特定空き家と管理不全空き家の違いとは?近年の空き家の現状も確認
こんにちは。栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」の土屋です。
近年、人が住まなくなった空き家が増えており、社会問題になっています。
令和5年(2023年)には、「特定空き家」に加えて「管理不全空き家」に対する措置が法令に新設されました。
「空き家には『特定空き家』と『管理不全空き家』があるようだけど、何が違うのだろう」と、疑問を抱かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、特定空き家と管理不全空き家の違いについて解説します。
近年の空き家の現状もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「特定空き家」と「管理不全空き家」とは?
特定空き家と管理不全空き家は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」で設定された、いずれも自治体(行政)から認定される空き家の区分を指します。
空き家とは、おおむね1年以上誰も住んでいない・利用されていない建築物や敷地であり、放置すると、倒壊や景観悪化、犯罪に巻き込まれるなど、さまざまなリスクが伴うものです。
空き家の区分や放置空き家への措置が法で制定される以前は、本来ならば空き家は所有者のものですから、行政が問題への対処に動くことは原則できませんでした。
特定空き家・管理不全空き家であると認定することで、空き家の適切な管理を促進し、空き家の放置に伴う問題を未然に防ぐよう、市区町村の介入が可能になったのです。
空き家の放置リスクは、「空き家放置はリスクがたくさん!活用方法やすぐできる解決方法をご紹介」で詳しく解説していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
特定空き家とは
特定空き家とは、平成27年(2015年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法(第2条2項)」が施行された当初から、定義づけられている空き家の区分です。
一言でいいますと、倒壊などのリスクがあり、自治体が改善について指導し、所有者が従わない場合は強制撤去等も可能な状態の空き家です。
具体的な指定基準はのちほど、管理不全空き家との違いでお伝えしますね。
管理不全空き家とは
管理不全空き家とは、令和5年(2023年)に改正された「空家等対策の推進に関する特別措置法(第13条)」で新たに追加された空き家の区分です。
現状、適切な管理が行われていないために、そのまま放置すると特定空き家になってしまう可能性のある状態の空き家を指します。
なぜ管理不全空き家が新設されたのかといいますと、特定空き家になる一つ前の段階を設け、一手早めに行政の介入を行うためです。
「特定空き家になる(状態が悪化してしまう)前に、空き家の所有者に適切な管理を指導しよう」ということですね。
特定空き家と管理不全空き家の違い
ここまで、特定空き家と管理不全空き家の概要をお伝えしました。
2つの違いは主に、認定の基準と、罰則の内容にあります。
「認定基準」が違う
特定空き家と管理不全空き家は、自治体に認定される基準が異なります。
特定空き家の認定基準
まず特定空き家については、「空家等対策の推進に関する特別措置法(第2条2項)」にて、次のように定義されています。
- そのまま放置すれば、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空き家は、上記のような状態にあると認められる空き家を指します。
管理不完全空き家の認定基準
一方の管理不全空き家は、先にお伝えした通り、放置すれば上記のような特定空き家になるおそれがある空き家です。
国が示す空き家の管理指針を基準にみて、所有者が「定期的かつ適切な管理をしていない」と判断する状態であると、認定される可能性が高いといえます。
下記のように、現状ではまだ周囲に悪影響をおよぼしてはいないものの、将来的にその可能性がある空き家は注意が必要です。
<適切な管理がなされていない空き家の例>
- 庭木や雑草が伸び放題になっており、害虫などが発生する可能性がある
- 掃除が行き届いておらず、ゴミなどが散らばった状態で放置されている
- 建物の一部が破損・腐食しており、周囲に悪影響を及ぼすおそれがある
「罰則の内容」が違う
特定空き家と管理不全空き家には、共通する罰則もある一方、違う部分もあります。
まずはそれぞれ、自治体の指導の流れを比べてみましょう。
<管理不全空き家>
- 空き家の状態から、自治体に「管理不全空き家」と認定される
- 適切な管理をするよう、指導される
- 改善がない場合、自治体から勧告されて「住宅用地特例」の対象から除外される
<特定空き家>
- 空き家の状態から、自治体に「特定空き家」と認定される
- 適切な管理をするよう、助言・指導される
- 改善がない場合、勧告や命令がなされる
- 勧告に対して改善が見られない場合、「住宅用地特例」の対象から除外される
- 命令に違反すると、50万円以下の過料、強制撤去(解体)の対象となる
勧告を受けて改善が見られない場合に「住宅用地特例」の対象外となり、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍と、税負担が重くなってしまう点は共通しています。
特定空き家には更に、過料のペナルティや、行政による解体措置が設けられており、管理不全空き家は、あくまで適切な管理を促進するための措置であるといえるでしょう。
特定空き家については「特定空き家とは?指定されるケースや罰則をチェック!」でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご参照ください。
特定空き家や管理不全空き家が増えているのはなぜ?
総務省の調査によると、居住目的のない空き家の数は昭和63年(1988年)から平成30年(2018年)の20年間で約1.9倍、182万戸から349万戸へ増加しました。
空き家が増えている背景には、いくつかの原因が考えられます。
日本全体で人口が減少傾向にあり、家の数に対して住む人が減ったというのも理由の一つですし、相続で親の家を引き継いだものの、すでにマイホームがあり使い道がないというケースもあるでしょう。
遠方にある物件は特に、売却を不動産会社に相談しに行く時間がない所有者もいるはずです。
また、家を解体し、土地だけにしてしまうと、前述の「住宅用地特例」が利用できなくなるので、空き家のまま残しているパターンもあります。
そうした空き家を、定期的な管理ができず放置してしまい、特定空き家や管理不全空き家の増加につながっているのです。
高齢化・少子化に後押しされ、今後ますます空き家が増加することを見越し、令和5年(2023年)に「空き家対策特別措置法」の法改正が行われました。
管理不全空き家の区分設定だけでなく、空き家の利用拡大を図ったり、強制撤去の円滑化を図ったりする制度が盛り込まれています。
改正法の詳しい内容については、国土交通省の「住宅:空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」をご参照ください。
特定空き家と管理不完全空き家の違いは認定基準と罰則の内容にある
特定空き家と管理不全空き家の違いは主に、認定の基準と、罰則の内容にあります。
特定空き家は、周囲に著しい悪影響をおよぼすおそれがあり、現状のまま放置することが不適切だと認められる空き家です。
対して管理不全空き家は、放置することで特定空き家になりかねない空き家であり、増え続ける空き家が特定空き家になってしまうまでに対処するため、一つ前の段階として新設された区分です。
特定空き家には、共通する「住宅用地特例」の対象から除外されるほか、過料や強制撤去の対象となるペナルティが設けられているのに対し、管理不全空き家は適切な管理を促進する措置といえるでしょう。
栃木県で不動産の売却を検討している方は、栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」に、ぜひご相談ください。
那須塩原店 土屋 清