境界トラブルで境界未確定の場合の売却方法は?多い事例や解決策も紹介
こんにちは!栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」の小川です。
土地を売却する際には、その境界を買主にはっきりと示す必要があります。
なぜなら、曖昧な境界であるとトラブルが起こりやすく、結果的に不動産の価値を下げてしまうからです。
売主が境界を確定させ、できるかぎりトラブルを解消しておけば、資産価値を落とさず売却することができます。
今回は境界トラブルがある家を売却する方法を解説!
境界トラブルでよくある事例と解決策もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
境界とは?境界未確定だとトラブルが起きやすく売却が難しい理由
土地の境界とは、自身の土地と他人の土地との境目のこと。
境界には、土地登記簿に記載された隣接する土地との境界線である「筆界」と、隣地所有者と話し合って決める「所有権界」の2つがあります。
境界未確定の土地とは「なんらかの原因で境界が曖昧になっている土地」のことですが、その一因として、筆界と所有権界のズレ(不一致)の場合も多いです。
所有権界は当事者間で合意すれば自由に変更でき、変更した際は現地に境界標(境界を表すコンクリートや石、金属の杭)やブロック塀などを設置するのが一般的です。
このとき、所有権界を変更したにもかかわらず登記簿に反映しなかった場合に、本来一致するはずの筆界とのズレが発生します。
所有者の変更などでさらに時が経つことで、証明が難しくなる可能性も。
このようなズレが起こり境界が未確定であると、隣地が境界を認めてくれなくて売却までが長引いてしまったりなど、トラブルになりやすいです。
そして原則的には、売主は「境界明示」の義務があり、境界線が曖昧なままでは売却できないため、境界確定の測量や手続きを行わなくてはいけません。
「境界確認」により境界線が決められなかった場合は、裁判に決定をゆだねて「筆界確定」を行います。
境界確定の詳しい方法については、後ほどご紹介しますね!
ただし、実は買主さえ「未確定でも大丈夫」と了承すれば売却自体は行えます。
境界未確定でも売却できるが買主のリスクがあるため難しい
売却をすることは可能ですが、買主側は境界トラブルに巻き込まれるリスクのほか、住宅ローンの担保に設定できないリスクも伴うので注意が必要です。
買主のほとんどは住宅ローンを借りる前提で不動産購入をするため、ローン審査に通らない状況に陥ると、そもそもの売買取引が成り立たない…ということも。
金融機関は「きちんと境界明示できない=何らかのトラブルがあるのでは?」と、土地の評価を下げる傾向があり、十分な融資額が見込めない可能性があるのです。
売却前に解決!境界トラブルでよくある事例と解決方法
境界関係のトラブルには、主に次のようなものがあります。
- ブロック塀による区切りが境界ではなかった
- 境界標の破損や移動で境界が曖昧になった
- 建物・所有物が越境している
- 隣地所有者が協力的でない
- 所有者がすでに亡くなっている
1つずつ、具体的な内容を見ていきましょう。
「塀があれば安心」の考えは危険
「隣家との間に塀があるから、土地境界に問題はない」と安心している方は多いのではないでしょうか。
実はブロック塀で表す境界線は、設置された状況によって次のようなパターンがあります。
- 隣地の敷地内からギリギリの場所にある場合:境界線は所有地側の塀の側面
- 所有地側に設置の場合:境界線は塀の外側(隣地に接する面)
- 両家が共同で建てた場合など:境界線は塀のちょうど真ん中
- 塀はそもそも境界線ではない(境界線は別の場所)
塀を建造した時期が古くなればなるほど、誰が建てたのか、境界線はどこかという両家の認識にズレが生まれる可能性も。
日常生活では特に問題はないものの、土地を売却する段階で詳しい調査が必要となります。
裏付ける資料がない限り互いの主張が対立し、境界の位置が原因で隣家とトラブルになりかねません。
トラブルの解決策
対策としては、法務局に保管された「地積測量図」で土地の面積を確認し、現地の境界標と照合すること。
地積測量図では測量した場所と年月日、面積、境界標の表示がすぐに閲覧できるため、測量の手間がなく便利です。
ただし、地積測量図を利用する際の注意点もあります。
古いものは測量の精度が低く信頼性に欠けるため、平成17年度3月7日以降に作成された図面を参考としましょう(この後から隣地所有者の境界立会いが必須となったため)。
また、相続した土地が一般道路に面している場合、道路との土地境界は地積測量図で確認できますが、古すぎて現況に合っていないケースも。
地積測量図と現況が違って境界が曖昧な場合は、道路は国の公共用財産のため、道路との境界確定申請が必要です。
国からの一方的な確定ではなく、所有者と協議・合意の上で行われるのでご安心ください。
境界標の破損や移動で境界が曖昧になった
境界標を破損したり、移動や撤去したりしたことから境界標の信ぴょう性が損なわれ、トラブルに発展するケースも。
よくあるケースとして、次のような状況が想定できます。
- 隣地とのブロック塀や下水管などの設置工事にて、施工業者が境界標を元の位置に戻さなかった
- 建物の建て替え工事の際、境界標も一緒に撤去した
- 官公庁の道路工事にて、道路部分にあった境界標が失われた
- 上記の件で失われた境界標が、いつの間にか復元されていた
このような状況では、土地境界の判断基準として当てになりません。
また、隣家と親交が深く、土地を譲ったものの境界標を移動していなかったというケースも。
取引の当事者は「敷地境界線が変わった」と認識していますが、世代が変われば記憶も薄れます。
子孫が土地を売ろうと土地家屋調査士に依頼した際に「地積測量図」と敷地境界線が違うことが発覚し、大きなトラブルに発展した例もあるようです。
トラブルの解決策
対策としては、境界付近にて工事の予定がある場合、着手前に隣地所有者と打ち合わせを行うことが大切です。
現地で立会い、目印となる構造物との位置関係を写真撮影するなど現況の境界標を記録して、一時撤去後に再び両者立ち合いで復元しましょう。
すでに境界標が失われている場合は復元の必要があるため、隣地所有者の了解を得て、地積測量図を基に再設置します。
土地境界は当事者同士が納得していても、きちんと処理をしておかないと子々孫々の代で困る可能性があります。
境界標の移動はもちろん、境界線を変更した経緯を裏付ける資料を残すことが大切です。
建物・所有物が越境している
越境とは、屋根や雨どいが隣地の上空へかかっていたり、敷地に木の枝が飛び出していたりなど建物や庭木など所有物が隣地に侵入(占有)してトラブルになるケースです。
上記のような越境物だけでなく、普段生活をする分には特に気にならなかったものの、建物の建て替えや売却に伴う測量で発覚する場合も。
上下水道管やガス管など境界線の地下部分にある越境や、電柱から受電する引込線など上空の越境物が該当します。
占有された部分は建築可能な面積に含めることができないため、新築時の邪魔となり、土地売却には大きなマイナスになります。
トラブルの解決策
対策としては、隣地所有者との立会いで所有物がどのように越境しているか確認し、納得の上で越境物の同意を行うことです。
現況を測り境界を復元したのち、境界標を設置して位置をはっきりとさせます。
このとき、次世代にも同意の事実を伝えるために、「境界確認書」や占有物の「越境の覚書」を作成しましょう。
両家で保管しておけば、将来的な土地売却や所有者の変更時に活用できます。
隣地所有者が協力的でない
境界を確定するには、隣地所有者の協力が欠かせません。
しかしながら「昔からこの境界だった」と主張し、立会いに協力的でない人も中にはいます。
境界付近での工事の際、隣地に立入許可を求めても断られるなど、売却以外の場面でもトラブルになりやすいと言えます。
また、境界確定には土地所有者全員の合意が必要ですが、複数の人が共同で所有している場合に全員の同意が揃わないというトラブルも多いです。
数人の対応だけでも大変ですが、隣地がマンションである場合は、何十人もの住人に合意をもらわなくてはならないかもしれません。
管理組合法人がある規模の大きなマンションであれば、理事長によって立会い、署名押印の手続きも可能です。
しかし、小・中規模のマンションでは、住人1人1人への理解を仰ぎ、協力を得ないといけません。
トラブルの解決策
対策としては、日頃から近隣住民とのコミュニケーションを心がけておくこと。
面識がほとんどない人から突然交渉されるよりも、普段の雑談の中で小さく話題に挙げておくほうが、いざというときに相手も受け取りやすいですよね。
土地測量の協力も前もってお願いしておけば、意外とスムーズに進むかもしれません。
所有者がすでに亡くなっている
境界確認のため隣地所有者を探したら、すでに亡くなっていたという場合も。
その場合、当人に代わって相続人に立会い確認が必要です。
遺産分割が完了していない場合は原則として、法定相続人全員の立会い確認が求められます。
トラブルの解決策
相続人の数が多く全員の立会いが困難な状況では、代表者から他の相続人に説明してもらい、確認を得る形もあります。
確認書には全員の署名と押印がいるため、手続きにかかる時間も考えて、売却スケジュールには余裕を持たせることが大切です。
また、所有者が亡くなっている場合とは異なるものの、隣地が空地で所有者がわからないケースもあります。
その場合は土地家屋調査士に依頼すれば、登記記録から元隣地所有者の現住所地を調べてもらえますよ。
境界トラブルがある家を売却する方法を詳しくご紹介!
ご紹介したような境界トラブルがある家を売るための一歩は、所有する土地の境界を確認することです。
土地の境界確定をする方法
土地の境界が確定している証明書類(図面)がない場合は、新たに測量しなければいけません。
境界を確定するには、隣地の所有者と話し合いによって確定させる方法や、「確定測量」という方法があります。
確定測量では、有資格者である土地家屋調査士と隣地所有者が立会い、土地の境界すべてを確定させます。
土地面積を正確に測る目的で行われるため、公的にも信用度の高い方法です。
3〜4カ月ほど時間がかかるため、売却スケジュールは余裕をもって計画しましょう。
測量は「測量士」「土地家屋調査士」ともに行えますが、測量した境界を登記したいのであれば、登記を目的とした測量・境界確定ができる土地家屋調査士に依頼しましょう。
境界未確定の土地の売却にかかる費用
土地を売却する際に確定測量をする場合、基本的な費用の負担者は売主です。
測量がしやすい四角い土地(100㎡)の場合では、測量費用の相場は30〜80万円程度となり、土地の形が複雑で境界点が多いほど費用はかさみます。
公有地や水路と接しているケースは、行政と民有地の所有者の立会いで境界確認(官民査定)する必要があるため、さらに費用は高めです。
通常の不動産売却にかかる費用相場については、こちらのコラムで解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
不動産売却の費用はどのくらい?内訳ごとの目安や安く抑える方法も!
境界確定で隣地所有者の協力が得られない場合は?
確定測量には隣地所有者の立会いが必要ですが、隣人トラブルの影響で話し合いがまとまらないなど協力が得られない場合もあります。
そのような場合には「筆界特定制度」「境界確定訴訟」という2つの方法が利用できます。
筆界特定制度
筆界特定制度とは、土地所有者の申請に基づき、法務局の管轄において筆界特定登記官が筆界を特定する制度です。
申請から6カ月ほどで結果が明らかになり、隣地所有者との間で「特定結果に従う」との合意が取れれば対外的な効力も高まるでしょう。
土地価格に基づいて計算される申請手数料のほか、測量費用や代理人に任せた場合は代理人費用がかかります。
境界確定訴訟
境界確定訴訟とは、裁判所にて境界確定を求める訴訟です。
筆界特定制度とは異なり、法的な拘束力を持つのが特徴ですが、審判が終わるまでにおおむね2年の時間がかかるなど、金銭的なコストが大きなデメリットです。
高額な裁判費用や訴訟にかかる労力も考慮すると、隣地所有者とはなるべく話し合いで解決したいですね。
隣人トラブルについては、こちらのコラムで解説しています。
近隣・隣人トラブルのある家の売却方法は?解決策や告知義務も解説
境界確定を待てない場合はどうすればいい?
土地売却の際には売主が買主に「確定測量図」を示し、実測面積(実際に測量した面積)を基本とする契約が望ましいですが、売却を急ぎたい場合もあるでしょう。
隣人トラブルで話し合いが進まない、複数所有者がいて全員集まれないなど様々な要因で、新しく確定測量図が作れない状況も想定できます。
「とにかく早く売りたい」という場合には、実測面積ではなく「公募面積(登記簿に記載された面積)」での公募売買(取引)も可能です。
公募売買では「後日測量し、面積が増減しても代金の清算は行わない」などと条文を入れるのが一般的です。
ただし、あまりに差異が大きいと売主・買主どちらかの損となり、後日トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
境界を確定させ、トラブルの少ない土地売却を
境界未確定の土地は、原則的に売却が難しく、売主・買主どちらにとってもリスクが高いと言えます。
境界に関わるトラブルはいくつかあり、隣地所有者との認識のズレにより引き起こされることが多いです。
「塀があるから安心」といった方も多いですが、塀や境界標は場合によっては当てにならないときもあります。
あらかじめ土地境界を確認するには、地積測量図が便利ですよ。
また、境界確定には隣地所有者の協力が不可欠なため、日頃から近隣住民とのコミュニケーションを取っておきましょう。
境界が曖昧な場合は確定測量を行い、買主にきちんと「境界明示」できるよう準備が大切。
隣地所有者が協力的でない場合は、筆界特定制度や境界確定訴訟といった手段があります。
土地の売買について不安がある場合は、お近くの不動産会社に相談するのもおすすめです。
栃木県で不動産の売却を検討している方は、栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」に、ぜひご相談ください。