不動産売却で委任状が必要なケースとは?書き方や注意点もチェック
こんにちは。栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」の土屋です。
不動産売却時に用いる委任状とは、「売買手続きを代理人に委任する」と第三者である買い主に証明するために必要な書類です。
意味は知っていても、「具体的にどんなときに必要になるのだろう」と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、不動産売却で委任状が必要なケースを解説します。
委任状の書き方や必要書類、委任状を用いる際の注意点もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
不動産売却で委任状が必要なケース
不動産売買は高額な取引であり、ほかの人が勝手に売買することで所有者の財産を損なう事態を防ぐため、原則的に所有者本人でないと手続きができません。
しかし、本人から「不動産売買を委任します」という同意を得て手続きをする場合は例外となります。
委任状とは、委任を受けた受任者である「代理人」に、「確かに本人から、法律行為を代わりに行える権限を与えられている」という代理権を証明する書類です。
委任状に記載された範囲内の手続きであれば、代理人の行なった内容はすべて、本人に効果が及び、本人の意思のもとで行われたとみなされます。
では具体的に、不動産売却において、どんな場合に委任状が必要となるのでしょうか。
委任状が必要になるケースとは?
委任状が必要になるのは、所有者本人に諸事情があり、売却手続きが行えない場合です。
【所有者が手続きを行えない理由の例】
- 売却物件が遠方に所在している
- 入院やケガ、病気などで身動きできない
- 共有名義の物件などで複数の所有者がおり、全員の都合が合わない など
売却手続きを取る時間がない、手続きしようにも都合がつかないというパターンですね。
夫婦が共同で購入したマンションや相続で兄弟姉妹が得た一戸建てなど、名義人が複数いる場合に、売買取引の場に立ち会えないというケースもあります。
名義人が異なる場合の売却方法は「名義人以外の不動産売却を解説!売却方法や共有名義の場合の対処法も」で詳しく解説しています。
ぜひあわせてご参照ください。
「法定代理人」がいる場合は委任状が使用できない
委任状を受けての代理人が「任意代理人」と呼ばれるのに対し、「法定代理人」とは本人の意思に関わらず、法律によって定められた代理人です。
【法定代理人の例】
- 所有者が未成年の場合:親権者や未成年後見人
- 成年被後見人の場合:成年後見人
法定代理人がいる場合は、任意代理人に出番はありません。
ちなみに、成年被後見人とは、事故や病気、認知症などの影響で正しい判断が難しいため、家庭裁判所によってその財産管理や生活サポートの法的な後見を受けた人のことです。
不動産売却の委任状の書き方と必要書類
委任状の形式は決まっておらず、メモ用紙に手書きで書いたようなものでも効力を持ちます。
しかし、あまりに簡素な委任状では、「この取引をして問題ないのだろうか?」と買い主の不信を買うかもしれません。
また、「代理人に一切の件を委任する」などと大きな権限を与えると、所有者の都合や希望に合わない売買取引になってしまう恐れも。
上記2つのリスクを防ぐには、信用に値するきちんとした委任状を作り込む必要があります。
委任状に記載する内容
まず、委任状には次の内容を記載しましょう。
- 本人と代理人の住所氏名
- 委任した日付
- 売買する土地や建物の情報(所在地や面積など登記事項証明書の表示項目)
- 委任条件(代理権限の範囲)
- 委任状の有効期限
- 委任状を作成した日付
- 本人と代理人の自署
委任した日付や有効期限など、いつからいつまで代理権が発生するかを明記することで、取引の有効性を証明し、委任に関わるトラブルを防ぎやすくなります。
書き方のポイント|代理人に判断の余地を残さないことが大切
代理人が所有者の意思を拡大解釈して減額交渉に応じるなど、勝手に判断して動いてしまうのを防ぐには、委任内容を細かく設定しておく必要があります。
とくに、金銭の拝受については利益に大きく関わることですので、「売買契約書どおりに」と省略するのではなく、きちんと転記しておきましょう。
【記載すべき委任内容の主な項目】
- 売却価格
- 手付金の金額
- 違約金の金額
- 口座情報や振込の手段
- 引き渡しの時期と残代金の支払時期
- 所有権移転登記の日付や費用負担について
加えて、望まないことがあれば禁止事項を、記載事項以外の判断や変更が必要な際は、「その都度所有者本人に確認を取るように」といった文言を特記しておくと安心です。
委任内容を書き連ねたあと、最後に「以上」と付記しておけば、追記して悪用されるリスクを減らせます。
不動産売却を代理人に依頼する際に用意するもの
委任状を用いて不動産売却を進めるには、委任状作成と合わせて、下記のものを揃えておきましょう。
- 本人と代理人の実印とその印鑑証明書(3カ月以内のもの)
- 本人の住民票
- 代理人の本人確認証(運転免許証など)
委任状には、本人と代理人がそれぞれ自署し、印鑑登録済の実印を押印します。
役所に登録された公的な本人証明ですので、三文判よりも買い主の信用度は上がるでしょう。
また、住民票を添付することで、本人の所在も証明できます。
不動産売却における委任状の注意点
不動産売却において委任状を用いる場合には、次の3点にご注意ください。
- 信頼できる人に代理を任せる
- 委任状があっても所有者本人の売却意思確認が必要である
- 委任状に「捨印」を押さない
まず、委任状を任せるなら、親族や弁護士、司法書士といった専門家など、信頼できる代理人選びが大前提です。
その上で、希望の売却ができるように代理権限を明確にするなどの、リスク回避策を採ることが重要となります。
そして、委任状を用いて代理人に売買手続きを進めてもらっても、最終的には、所有者本人に売却の意思が本当にあるのか、買い主か不動産会社と立会い、直接チェックする必要があります。
また、契約書といった書類の余白(欄外)に「捨印」と呼ばれる印を押しておく方法がありますが、委任状に用いるのは避けましょう。
捨印とは、誤りや訂正がある場合に訂正印を押す手間をなくすため押す印のことで、内容を書き換えられる可能性があるからです。
権限として記載されていない場合や変更があるときは必ず本人に確認を行うように、「本人と代理人でそのつど協議してから決定する」と記載しておくことをおすすめします。
不動産売却における委任状の内容は明確に記載しよう
不動産の売却は原則所有者本人しか行えませんが、諸事情があって売却手続きが取れない場合もあるでしょう。
法定代理人がいない場合は、代理人に代理権を与える「委任状」を作成し、それを買い主に提示することで、本人に代わって売却手続きを進められます。
委任状の作成に重要なポイントは、代理人に売却手続きを一任しないことです。
代理人に任せたい内容(代理権限)の範囲をきちんと定め、定められた内容以外のことや変更が必要になった場合は本人に確認を取るように徹底しましょう。
信用に値する人に代理を任せることはもちろんですが、自分が望む売買取引となるように、代理権限を絞って、リスクを防止することも重要だからです。
委任状を用いても、最終的には、買い主や不動産会社と直接、売却意思の確認が必要になることも知っておいてくださいね。
栃木県で不動産の売却を検討している方は、栃木県・地域専門の不動産売買専門店「イエステーション」に、ぜひご相談ください。
那須塩原店 土屋 清